(11)【公開番号】特開2007−103316(P2007−103316A)
(43)【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
(54)【発明の名称】X線管
(51)【国際特許分類】
H01J 35/08 (2006.01) H01J 35/16 (2006.01) H01J 35/06 (2006.01)
【FI】
H01J 35/08 C H01J 35/16 H01J 35/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2005−295705(P2005−295705)
(22)【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
【住所又は居所】静岡県浜松市市野町1126番地の1
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100092657
【弁理士】
【氏名又は名称】寺崎 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100124291
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 悟
(72)【発明者】
【氏名】岡田 知幸
【住所又は居所】静岡県浜松市市野町1126番地の1 浜松ホトニクス株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】稲鶴 務
【住所又は居所】静岡県浜松市市野町1126番地の1 浜松ホトニクス株式会社内
--------------------------------------------------
(57)【要約】
【課題】鮮明な拡大透視画像の撮像を可能にすると共に、拡大透視画像の拡大率を上げることができるX線管を提供することを目的とする。
【解決手段】電子が入射してとX線を発生するターゲット27bを含む陽極5を有するX線管1Aであり、この陽極5は、直状の本体部12と、本体部12の先端から本体部12の軸線C2方向に延在する突出部27とを有し、突出部27には、電子銃から出射された電子が衝突する傾斜面27aと、傾斜面27aを挟んで平行に配置された一対の側面27c,27cとが形成され、突出部27における一対の側面27c,27c間の幅は、この幅と同一の方向において、本体部12の幅よりも小さい。
【選択図】 図1
--------------------------------------------------
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極収容部内に配置された陽極のターゲットに、電子銃から出射された電子を入射させてX線を発生させ、そのX線をX線出射窓から取り出すX線管において、
前記陽極は、直状の本体部と、前記本体部の先端から前記本体部の軸線方向に延在する突出部とを有し、
前記突出部には、前記軸線に対して所定の角度を有すると共に前記ターゲットを含む傾斜面と、前記軸線と同一の方向に延在すると共に前記傾斜面を挟んで平行に配置された一対の側面とが形成され、
前記突出部における一対の前記側面間の幅は、この幅と同一の方向において、前記本体部の幅よりも小さいことを特徴とするX線管。
【請求項2】
前記突出部を通り、且つ前記軸線に対して直交する断面において、一対の前記側面に直交する方向の横寸法は、前記横寸法に直交する方向の縦寸法よりも短いことを特徴とする請求項1記載のX線管。
【請求項3】
前記突出部の表面の一部は、前記本体部の表面と面一に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のX線管。
【請求項4】
前記陽極収容部には、一対の前記側面に平行となるように、前記突出部を挟んで対向する一対の導電性平面部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のX線管。
【請求項5】
前記電子銃に設けられた電子出射口は、円形に形成されていることを特徴とする請求項1記載のX線管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線をX線出射窓から取り出すX線管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線は物体に対して透過性の良い電磁波であり、物体の内部構造の非破壊・非接触観察に多用されている。X線管は、電子銃から出射された電子をターゲットに入射させてX線を発生するのが、通例である。X線管は、特許文献1に記載のように電子銃を収容する筒状部材が、ターゲットを有する陽極を収容する筒状部材に取り付けられている。電子銃から出射された電子は、ターゲットに入射し、ターゲットからX線が発生する。X線は、X線管のX線出射窓を透過し、外部の試料に照射される。試料を透過したX線は、各種X線画像撮像手段で拡大透視画像として撮像される。
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,077,771号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、撮像される拡大透視画像が不鮮明になる要因の一つとして、X線出射窓から見た場合におけるX線の発生領域の形状(以下、「X線の発生形状」という。)の楕円化が挙げられる。X線の発生形状は、ターゲットに電子が入射する際の電子ビームの断面形状(以下、「電子の入射形状」という。)に起因する。つまり、電子の入射形状が円形に近づくほど、X線の発生形状も円形に近づくことになる。そのため、特許文献1に記載のX線管では、ターゲットを含む陽極の先端にシールド(フード電極)を設け、当該フード電極に電子の入射形状を調整する働きを持たせ、X線の発生形状を可能な限り円形状にしようとされていた。
【0005】
一方、撮像される拡大透視画像の拡大率を上げるためには、ターゲットへの電子入射位置(X線の焦点位置)からX線出射窓までの距離(Focus Object Distance、以下「FOD」という。)を短くする必要がある。しかしながら、陽極の先端にフード電極が設けられていると、FODが長くなる。このように、従来のX線管においては、フード電極をつけない場合には、拡大透視画像の鮮明度の問題が生じ、フード電極をつけた場合には、拡大透視画像の拡大率の問題が生じるといった問題があった。
【0006】
本発明は、鮮明な拡大透視画像の撮像を可能にすると共に、拡大透視画像の拡大率を上げることができるX線管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、陽極収容部内に配置された陽極のターゲットに、電子銃から出射された電子を入射させてX線を発生させ、そのX線をX線出射窓から取り出すX線管において、陽極は、直状の本体部と、本体部の先端から本体部の軸線方向に延在する突出部とを有し、突出部には、軸線に対して所定の角度を有すると共にターゲットを含む傾斜面と、軸線と同一の方向に延在すると共に傾斜面を挟んで平行に配置された一対の側面とが形成され、突出部における一対の側面間の幅は、この幅と同一の方向において、本体部の幅よりも小さいことを特徴とする。
【0008】
このX線管では、電子銃から出射された電子が入射するターゲットを含む傾斜面と、陽極の本体部の軸線と同一の方向に延在すると共に傾斜面を挟んで平行に配置された一対の側面とが形成され、突出部における一対の側面間の幅は、この幅と同一の方向において、本体部の幅よりも小さくなっている。このような条件を満たすことにより、電子の入射形状を円形に近づけることが可能になり、その結果としてX線の発生形状を円形に近づけることが可能となる。よって、鮮明な拡大透視画像を得ることができる。一方、フード電極を用いる必要がないために、FODを短くすることができるので、拡大透視画像の拡大率を向上させることができる。
【0009】
また、陽極の突出部を通り、且つ本体部の前記軸線に対して直交する断面において、一対の側面に直交する方向の横寸法は、横寸法に直交する方向の縦寸法よりも短くすることが好ましい。このようにすると、さらに、電子の入射形状を円形に近づけることが可能になる。
【0010】
また、陽極の突出部の表面の一部は、本体部の表面と面一に形成されていることが好ましい。このようにすると、突出部の表面の総てが本体部に対して段状に連なっている場合に比べて電界が乱れ難く、放電が起き難い。その結果、放電の影響なく、高い動作安定性を得ることができる。
【0011】
また、上記X線管の陽極収容部には、一対の側面に平行となるように、突出部を挟んで対向する一対の導電性平面部が設けられていることが好ましい。この導電性平面部の作用により、さらに、電子の入射形状を円形に近づけることが可能になる。
【0012】
また、X線管の電子銃に設けられた電子出射口は、円形に形成されていることが好ましい。このようにすると、さらに、電子の入射形状を円形に近づけることが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るX線管によれば、鮮明な拡大透視画像の撮像を可能にすると共に、拡大透視画像の拡大率を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明に係るX線管の実施の形態について説明をする。
【0015】
[第1実施形態]
図1〜図4に示すように、X線管1Aは、密封型のX線管である。X線管1Aは、陽極収容部としての管状の真空外囲器本体3を有し、真空外囲器本体3内には後述するターゲット27bを有する陽極5が収容されている。真空外囲器本体3は、陽極5を支持する略円筒状のバルブ7と、X線出射窓10を有する略円筒状のヘッド部9と、バルブ7とヘッド部9とを連結するリング部材7bとからなり、真空外囲器本体3に電子銃収容部11が溶接されて真空外囲器2となる。また、バルブ7とヘッド部9とは共通の管軸線C1となるようにリング部材7bに固定されている。ヘッド部9には、管軸線C1方向における一端にX線出射窓10が設けられている。一方、ガラス(絶縁体)からなるバルブ7の管軸線C1方向における他端は、開口を閉じるように縮径していき、陽極5の基端部5aの一部を外部に露出させた状態で、陽極5を真空外囲器本体3内の所望の位置に保持する。つまり、真空外囲器本体3は、その一端にX線出射窓10を有するとともに、他端で陽極5を保持している。なお、以下の説明における上下は、真空外囲器本体3の管軸線C1方向における一端側(X線出射窓10側)を上、真空外囲器本体3の管軸線C1方向における他端側(陽極5の保持側)を下とする。
【0016】
バルブ7の上端部には、リング部材7bが融着されている。リング部材7bは、金属製の円筒部材であり、上端に環状のフランジが形成されている。リング部材7bの上端は、ヘッド部9の下端部に当接して溶接される。
【0017】
ヘッド部9は、略円筒形状である金属製の部材であり、その外周に環状のフランジ部9aが形成されている。ヘッド部9は、フランジ部9aを挟んで下部9bと上部9cに分かれ、バルブ7との間で管軸線C1が共通するように下部9bの下端部にリング部材7bが溶接されている。ヘッド部9の上部9cには、その端部の開放を閉塞するようにBe材からなるX線出射窓10が設けられている。さらに、上部9cには、真空外囲器2内を真空にするための排気孔9eが形成され、排気孔9eには図示しない排気管が固定されている。
【0018】
ヘッド部9の上部9cには、その外周に平面部9dが形成され、その平面部9dには、電子銃収容部11を装着するためのヘッド部側貫通孔9fが形成されている。
【0019】
電子銃収容部11は略円筒形状であり、その一端部には、縮径して突き出た円筒状の首部11aが設けられ、その首部11aから円筒部11bが突き出している。首部11aはヘッド部9のヘッド部側貫通孔9fに嵌め込まれることによって、電子銃収容部11は、その管軸線C3が真空外囲器本体3の管軸線C1と略直交するように、ヘッド部9に位置決めされる。この電子銃収容部11はヘッド部9に接合される。
【0020】
図3に示すように、電子銃収容部11内には、電子銃15が収容されている。電子銃15は、電子発生部23と集束電極25とを有しており、集束電極25は円筒状であり、集束電極25の先端は、電子銃収容部11の円筒部11bの内周面に嵌め込まれ、それによって、集束電極25は電子銃収容部11に位置決めされている。集束電極25の先端の開口と円筒部11bの開口は円形に形成されており、電子出射口15aとなっている。
【0021】
電子発生部23から電子が放出されると、その電子は集束電極25によって集束作用を受け、電子出射口15aから出射されて、後述するターゲット27bに入射し、X線を発生させる。
【0022】
図1、図3及び図4に示すように、バルブ7とヘッド部9とは同心的に配置され、共通の管軸線C1を有している。そして、陽極5は、管軸線C1上に直状に延在している本体部12を有する。本体部12の基端はバルブ7の他端7aに保持されている。陽極5には、本体部12の先端からX線出射窓10側に向かって軸線C2方向に延在する突出部27が形成されている。突出部27は、ヘッド部9内に配置された断面略長方形状をなす。突出部27の先端は斜めに切り欠かれており、傾斜面27aとなっている。傾斜面27aには、円板上のターゲット27bが、その電子入射面が傾斜面27bと略平行になるように埋設されている(図1参照)。ターゲット27bはタングステンからなり、一方、陽極5は、ターゲット27b以外,銅からなる。電子銃15から出射された電子がターゲット27bに入射すると、X線が発生する。傾斜面27aは、X線が軸線C2上に位置するX線出射窓10から取り出せるように、電子銃15に対面する向きで、本体部12の軸線C2に対して所定の角度を有している。
【0023】
突出部27は、本体部12の軸線C2と同一の方向に延在すると共に、傾斜面27aを挟んで平行に配置された一対の側面27c,27cを有する。図5に示すように、一対の側面27c,27c間の幅W1は、この幅と同一の方向における本体部12の幅W2よりも小さくなっている。
【0024】
また、突出部27は、電子銃15に対面する側と反対側の面27dにおいては、本体部12の表面と面一になる曲面として形成されている。本体部12の表面と面一な曲面27dを有することで、突出部27と本体部12との段差部を最小限にすることができるため、面一となる表面が全くない場合に比べて放電が起こり難く、高い動作安定性を得ることができる。
【0025】
また、突出部27を、図3及び図4に示すように、本体部12の先端から本体部12の軸線C2方向に延在させることで、ターゲットが折れ曲がっているような形状に比べて放電が起こり難く、高い動作安定性を得ることができる。
【0026】
図6及び図7に示すように、電子銃15から出射された電子は、ヘッド部9内の各電極に印加された電圧によって、ヘッド部9内の空間に形成された電界によって形成された等電位面の法線方向に力を受けながら進行し、最終的に傾斜面27aのターゲット27bに入射してX線を発生させる。ターゲット27bに電子が入射する位置はX線の焦点位置となり、X線の焦点位置からX線出射窓10までの距離がFODであり、FODが短いほど拡大透視画像の拡大率が向上する。
【0027】
次に、X線管1Aにおける電子の焦点の大小、焦点形状及びFODについて、従来のX線管(米国特許第5,077,771号)からフード電極を取り除いたものと比較して説明する。
【0028】
図17〜図20は、従来のX線管からフード電極を除去したX線管(以下、「従来のX線管」という。)100を示す。この従来のX線管100は、円柱状の陽極101の先端を斜めに切り欠いた形状の傾斜面102をターゲットとして、電子を入射させてX線を発生させる。
【0029】
ここで、電子の入射形状G2は、一般的にその形状が円形に近くなるほど、結果としてのX線の発生形状H2は円形に近くなる傾向がある。なお、「電子の入射形状」とは、ターゲットに電子が入射する際の電子ビームの断面形状をいい、「X線の発生形状」とは、X線出射窓から見た場合におけるX線の断面形状をいう。つまり、図17に示した断面図における、電子銃105から出射された電子の進行経路の延長線上にある電子ビームの焦点位置P3と、図18に示した断面図における、電子銃105から出射された電子の進行経路の延長線上にある電子ビームの焦点位置P4とが略一致するように近づくほど(特に微小焦点化を求める場合にはターゲット上で略一致するように近づくほど)、電子の入射形状G2(図20参照)は、その形状が円形に近づき、X線の発生形状H2は円形に近くなる。
【0030】
従来のX線管100においては、図17及び図18において、電子ビームの焦点位置P3,P4が異なるために、図20に示すように、電子の入射形状G2は楕円になり、その結果、X線の発生形状H2も楕円化し易くなる。
【0031】
これに対し、図5、図6及び図7に示すように、本実施の形態に係るX線管1Aにおける陽極5の突出部27は、本体部12の軸線C2と同一の方向に延在し、突出部27には、傾斜面27aを挟んで平行に配置された一対の側面27c,27cが形成されている。さらに、一対の側面27c,27c間の幅W1は、この幅と同一の方向における本体部12の幅(直径)W2よりも小さい。そのため、従来のX線管100に比べて、図6及び図7におけるそれぞれの電子ビームの焦点位置P1,P2をほぼ等しくできるために、図9に示すように、電子の入射形状G1は円形に近づき、その結果、X線の発生形状H1も円形状となり易い。
【0032】
また、従来のX線管100では、電子の入射形状G2が楕円となる結果、図19(B)の一点鎖線で示すように、ターゲット上における電子の入射領域の形状F2は、X線出射窓103(図17参照)からみて楕円に近い形状になる。その結果、X線の発生形状H2も楕円形となり、拡大透視画像が不鮮明になる。なお、図19は、従来のX線管100の陽極101の先端を拡大して示し、(A)図は斜視図であり、(B)図は、(A)図の(b)矢視図である。
【0033】
これに対し、X線管1Aでは、電子の入射形状G1が円形に近づく結果、図8(C)に示すように、ターゲット上における電子の入射領域の形状F1をX線出射窓10(図6参照)から見て円形にし易く、X線の発生形状H1が円形となることで、鮮明な拡大透視画像を得ることができる。なお、図8は陽極5の突出部27を拡大して示し、(A)図は突出部27の斜視図、(B)図は、(A)図における(b)矢視図、(C)図は、(A)図における(c)矢視図である。
【0034】
また、X線管1Aでは、図5に示すように、突出部27を通って、本体部12の軸線C2に対して直交する断面において、一対の側面27c,27cに直交する方向の横寸法M1は、横寸法M1に直交する方向の縦寸法M2よりも短くなっている。そのため、従来のX線管100に比べて、電子の入射形状G1は円形に近づき、その結果、X線の発生形状H1も一層円形となり易い。
【0035】
また、X線管1Aの電子銃15に設けられた電子出射口15aは、図4に示すように円形に形成されている。そのため、電子の入射形状G1を一層円形にし易くすることができる。
【0036】
[第2実施形態]
図10及び図11を参照し、第2実施形態であるX線管について説明する。図10は、X線管の突出部を拡大して示す斜視図である。また、図11は、突出部の周囲に形成された等電位面を示す図であり、(A)図は、突出部を中心に拡大して示す断面図であり、(B)図は、(A)図のB−B線に沿う断面図である。なお、第2実施形態に係るX線管1Bにおいて、X線管1Aと同一又は同等の構造については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0037】
X線管1Bの陽極50は、円柱状であって直状に延在している本体部51を有し、陽極50には、本体部51の先端から本体部51の軸線C5方向に延在する突出部52が設けられている。突出部52は、本体部51の表面と面一に形成されて軸線C5方向に直状に延在する曲面52aを有する。また、突出部52において、本体部51の軸線C5を挟んで曲面52aと対向する側には、本体部51の表面と連続する傾斜面52bが形成されている。傾斜面52bは、X線出射窓10からX線が取り出されるように軸線C5に対して所定の角度を有している。また、傾斜面52bには、タングステンからなるターゲット52cが埋設されている。傾斜面52bを挟んで形成された一対の側面52d,52dは平行に配置されている。そして、一対の側面52d,52d間の幅は、この幅と同一方向における本体部51の幅よりも小さくなっている。また、突出部52を通って、本体部51の軸線C5に対して直交する断面において、一対の側面52d,52dに直交する方向の横寸法は、その横寸法に直交する方向の縦寸法よりも短くなっている。このことは、第1実施形態に係る陽極5と同様である。
【0038】
X線管1Bは、X線管1Aと異なり、突出部52が短くなっているが、X線管1Aと同様に、図17、図18及び図19に示すような従来のX線管100に比べ、図11(A)、(B)におけるそれぞれの電子ビームの焦点位置P1,P2をほぼ等しくできるために、X線の発生形状H1は円形となり易い。
【0039】
[第3実施形態]
図12〜図16を参照し、第3実施形態であるX線管1Cについて説明する。なお、第3実施形態に係るX線管1Cにおいて、X線管1Aと同一又は同等の構造については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0040】
X線管1Cは、密封型のX線管であり、第1実施形態と異なる点は、内筒管13を有することである。内筒管13は、略円筒状であって導電性の金属からなり、ヘッド部9内にバルブ7、ヘッド部9と同心的に配置され、共通の管軸線C1を有するように設けられている。内筒管13の管軸線C1方向における上端側は、陽極5の突出部27の上端よりも上方に配置されている。また、内筒管13の内壁面には、内方に向けて盛り上がった同一形状の一対の導電性平面部13d,13dが形成され、一対の導電性平面部13d,13dは管軸線C1に関して対称をなす。一対の導電性平面部13d,13dは、陽極5の突出部27を挟んで対向し、突出部27に形成された一対の側面27c,27cに平行となるように配置されている。また、導電性平面部13d,13dの大きさは、少なくとも突出部27に形成された一対の側面27c,27cの傾斜面27aに対応する領域を覆うだけの大きさが必要であり、本実施の形態においては、一対の側面27c,27cをほぼ覆う大きさである。
【0041】
また、内筒管13には、電子銃収容部11を装着するために、ヘッド部側貫通孔9fよりも小径となる内筒管側貫通孔13cが形成されている。そして、大径のヘッド部側貫通孔9f側から見て、小径の内筒管側貫通孔13cは、大径のヘッド部側貫通孔9f内に位置すると共に、X線出射窓10側に偏心して配置されている(図14参照)。そして、電子銃収容部11の円筒部11bは内筒管13の内筒管側貫通孔13cに嵌め込まれる。
【0042】
また、図15及び図16に示すように、電子銃15から出射された電子は、ヘッド部9内の各電極に印加された電圧によって、ヘッド部9内の空間に形成された電界によって形成された等電位面の法線方向に力を受けながら進行し、最終的に傾斜面27aのターゲット27bに入射してX線を発生させる。
【0043】
そして、内筒管13に導電性平面部13d,13dが設けられることで、従来のX線管100(図18参照)に比べて、図15及び図16におけるそれぞれの電子ビームの焦点位置P1,P2をほぼ等しくできるために、X線の発生形状H1は円形となり易い。
【0044】
本発明は、前述した実施形態に限定されない。例えば、ターゲット27b,52cの材質は、タングステンに限定されず、その他のX線発生用材料であってもよい。また、ターゲット27b,52cを陽極5,50の一部に設ける場合に限定されず、陽極5,50の全体を所望のX線発生用材料で一体に形成し、陽極5,50に設けた傾斜面27a,52bがターゲットとなるようにしてもよい。さらに、真空外囲器本体(陽極収容部)3に陽極5,50が収容される場合の「収容」とは、陽極5,50の全体を収容している場合に限定されず、例えば、陽極5,50の一部が真空外囲器本体(陽極収容部)3から露出している状態も含まれる。また、管状の真空外囲器本体(陽極収容部)3とは、円形の管状に限定されず、矩形、その他の形状であってもよく、また、ストレートに伸びる管状に限定されず、カーブまたは屈曲した管状であってもよい。また、内筒管13を設けない場合には、内筒管13に設けた導電性平面部13d,13dと同一の構造となる導電性平面部を、ヘッド部9の内壁面に直接設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るX線管の第1実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】本発明に係るX線管の斜視図である。
【図3】本発明に係るX線管の断面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図4のV−V線に沿う断面図である。
【図6】第1実施形態に係る突出部の周囲に形成された等電位面を示すための拡大断面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】陽極の突出部を拡大して示し、(A)図は突出部の斜視図、(B)図は、(A)図における(b)矢視図、(C)図は、(A)図における(c)矢視図である。
【図9】陽極の突出部を拡大して示すと共に、電子の入射形状及びX線の発生形状を示す図である。
【図10】本発明に係るX線管の第2実施形態を示し、突出部を拡大して示す斜視図である。
【図11】第2実施形態に係る突出部の周囲に形成された等電位面を示す図であり、(A)図は、突出部近傍を拡大して示す断面図であり、(B)図は、(A)図のB−B線に沿う断面図である。
【図12】本発明に係るX線管の第3実施形態を示す分解斜視図である。
【図13】第3実施形態に係るX線管の断面図である。
【図14】図13のXIV−XIV線に沿う断面図である。
【図15】第3実施形態に係る突出部の周囲に形成された等電位面を示すための拡大断面図である。
【図16】図15のXVI−XVI線に沿う断面図である。
【図17】従来のX線管のターゲット近傍を拡大して示す断面図である。
【図18】図17のXVIII−XVIII線に沿う断面図である。
【図19】従来のX線管の陽極の先端を拡大して示し、(A)図は斜視図であり、(B)図は、(A)図の(b)矢視図である。
【図20】従来のX線管における陽極の先端を拡大して示すと共に、電子の入射形状及びX線の発生形状を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1A,1B,1C…X線管、3…真空外囲器本体(陽極収容部)、5,50…陽極、10…X線出射窓、12,51…本体部、13d…導電性平面部、15…電子銃、15a…電子出射口、27,52…突出部、27a,52b…傾斜面、27b,52c…ターゲット、27c,52d…側面、27d,52a…曲面(突出部の表面の一部)、C2,C5…本体部の軸線、W1…一対の側面間の幅、W2…本体部の幅、M1…横寸法、M2…縦寸法。
浜松ホトニクス / Hamamatsu Photonics / 2007 / No.3
テーマ:知的財産権
